あぁ、相撲界


理想の相撲界とは、どんなのだろう?

横綱を中心に優勝争いが盛り上がって、
満員御礼・高視聴率・スポーツ紙の一面独占というのも確かに理想だ。

そんな番付上位の脚光の浴びる部分の華やかさが大切である一方で、
幕下のまま引退していく数多くの力士達が、
幸せな第二の人生を送れるかどうかも大切である。

例えば、新しい職場に入った彼らが、人事担当者などに、

「挨拶は出来るし、敬語など言葉がしっかりしているし、
取引先に可愛がってもらえるし、職場の雰囲気を明るく出来るし、
何よりも我慢強い。さすがは元力士だ。
文句ばかり言う大卒連中より、よっぽどいい」

などと評価してもらえる人材を育てる場であってほしい。
それがもう一つの相撲界の理想である。

仮に、どうしようもないワルの中学生がいるとして、
このままだとどんな大人になってしまうか不安だから、
卒業後すぐに角界に預ける。

力士としては出世しなかったとしても、
7年後の22歳になった時に、
普通に高校・大学と進んだ連中より、
よほど社会の役に立つ存在に更生させることが出来たとしたら、
それこそ「国技」と胸を張れると思うのだ。


今は、それが全く逆になっているように見える。

純真な中卒、高卒あたりが角界に入ったとして、
まず稽古の名を借りたリンチで殺されるかもしれないし、
師匠の指示で傷害致死罪に問われる可能性もあるし、
後輩へのイジメを楽しむ性格になるかもしれないし、
裏社会との接点が生じて大麻野球賭博に誘われたりもし、
反省能力が欠如した隠ぺい人間に変えられてしまいそうではないか。

どうなんだろう?
現状だと、多くの企業は履歴書に力士歴があるだけで、
採用を思いとどまるような気がする。

逮捕されたヤツが、
引退後に暴力団に入っていたというのは実に悲しい。
それしか道がなかったのだろうか?
相撲界の人間育成・教育機関としての機能が、
ほとんど働いていない現実を見せつけられてしまいました。


青臭い理想論であるのは私にも分かっているけど、
この人を育てる部分をしっかり復活させない限り、
相撲界はもう駄目ではなかろうか。

こんな事を書くのは、
本質的には潜在力があるはずだと信じているからです。

学校には出来ない事がいっぱいありますからね。

自衛隊伝統芸能界などの世界も含めて、
人生の普通の階段を登れぬ人の受け皿が多様であればあるほど、
社会というのは良くなると思うのです。
自衛隊」には反論があるでしょうけど。


そういう意味において、
今回でも野球賭博に係わった力士たちを解雇し、
追放してしまうという処分には違和感があります。
「人を育てる」面を放棄しているように見えるので。

犯罪者であろうとも、罪を償わせた後に、
中でしっかり鍛え直してマトモな人間として社会に送り出してやる、
そんな意識を角界全体で持てませんかね。

問題を起こしたヤツは切るという外科手術が必要な場面はあるが、
健全さを取り戻すための内科的な治療の能力が皆無では困るのです。


琴光喜は愚か者である。
日本社会には絶対に不必要な銃に汚染された連中の資金源になっていた事を
心の底から恥じて反省するべきだ。

その上で、ある程度の期間が過ぎたら、
次世代の力士を育てる立場には戻れるようにして欲しい。
いやせめて、
中学や高校の相撲部の指導くらいは出来る程度の処分であって欲しい。
(当人の意志は不明だけど)

大きな栄光も挫折も経験した彼だからこそ、
若くて不安定な年齢の奴らに伝え得る物も大きいのだ。
聖人君子に教わるより、よっぽど共感も出来るはず。
相撲技術に関しては、理論派でしたしね。勿体ないよ。

そんな訳で、長い目で見て「ガンバレ琴光喜!」。