原千代江「なぜ競馬学校には『茶道教室』があるのか」





副題は「勝利は綺麗なお辞儀から」

JRAの競馬学校で茶道を教える先生の書かれた、
自伝的要素も含んだ、心美しい一冊。

昨日、図書館で見つけて、30分で読んでしまった。
活字がスカスカだから、あっと言う間に読める。
だからと言って、中身が無い訳ではない。
むしろ無駄なく暖かい内容は、お茶の心そのものなのかも。

騎手を目指す生徒らの素顔が伝わってくるし、
卒業後に騎手になってからの交流の人間味も良く分かるし、
競馬ファンには必読書かもしれません。

亡くなった玉ノ井騎手や岡騎手のエピソードは、
短いながらも命の輝きを感じさせる文書になっています。
古い事故で思い出す人も減っている中、
何よりの追善になっていると思いました。
素晴らしいです。

大活躍する生徒もいれば、命を落とす生徒もいて、
彼女は長く競馬場へ足を運ばないでいたのが、
東日本大震災の後にはレースを見に行くようにもなる。
その時は、自分の生徒の全ての馬券を買う。

それを知った際の田中勝春騎手の反応や、
駅のホームでの熊沢騎手との会話など、
一対一で「目と目をしっかりと合わせて、
覚悟を持ってしっかりと対峙」してきた著者しか書けない、
人間としての騎手の顔でした。

茶道ファンがどう感じるかは知らないけれど、
競馬ファンとしては星5つです。☆☆☆☆☆