美少年アンカツ登場!(山口瞳著「草競馬流浪記」を読む②)

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さて、今回から、この本をじっくり読んでいきます。

第一章は笠松競馬。

内馬場に田んぼと畑があって、墓もあって、羊も飼われている、
そんな牧歌的な風景の紹介も面白いけれど、
何よりも現在の私たちにとって興味深いのは、
若き日のアンカツが出てくることです。

場内アナウンサーとの会話。


  「なんでも言ってください。どこへでも案内します。
   安藤勝己に会いたいと思いませんか。
   検量室へでも厩舎へでも案内しますよ」

  「安藤勝己というのは、うまいかね」

  「上手ですが、いま、ちょっと、
   勝ちに行きすぎるようなところがありますね」

  「そういう騎手が好きだ」

  「意識しているところがあるんじゃないですか。
   だけど、中央へ行ったら、凄い人気になるでしょうね。
   なにしろ、おぼこいで・・・・・」

  「おぼこい?」

  「可愛い顔をしてるんですよ」

  「ああ、僕はそれにヨワイんですよ。
   可愛い少年というのは、ちょっと困るんだ」

   安藤には会わないことにした。
   惚れてしまって帰れなくなったら大変だ。
   大澤さんは、安藤を見ていると怖い感じがするという。
   天才型の美少年にはそういうところがある。
   事故を起こさなければいいが・・・と、しみじみした口調で言った。


現在の、「老獪」という表現がぴったりの安藤勝己を見ているので、
この美少年ってのには笑ってしまいます。
でも、大きな事故を起こすことなく、今までこれて本当に良かった。


ところで、笠松競馬では、昭和48年と50年に事件があったそうです。
それがすっかり粛清されて、騎手の年齢が若くなり、
この時点で32歳が最年長と書かれています。

つまり、若き日のアンカツは、
黒い事件の影響で先輩騎手たちが追放された状況で、
一気にチャンスを掴み、名ジョッキーへの階段を駆け上ったらしいです。

なるほどなあ。

兄の安藤光彰や、昨年のWSJSで活躍した四角い顔の浜口楠彦も、
リーディング五位に入っているのが、なんだか嬉しい。