ノミ屋がロビーを占領して(「草競馬流浪記」を読む9・船橋)

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短い文章ですが、
山口瞳という作家の社会観がよく分かる箇所があります。


  公営競馬には、
  ちょっと如何わしいところがある(と僕は思っている)。

  その如何わしいものが許されているという社会状況を守りたい。
  断固として守りたい。

  しかし、ここまでノミ屋(ヤクザ者)が跋扈するということは、
  僕の愛してやまない如何わしきものを破滅に導くことになる。

  如何わしいものが如何わしいものの手でもって、
  ぶちこわされることを許さない。


難しいところですが、私にはよく分かるような気がします。

清潔潔白な世の中など、人間味がなく息苦しい。
ちょっとくらい灰色の部分があってこそ、人間の生きる社会でしょう。
でもその灰色が、どんどん濃くなって黒になってしまうと、
大きな害を社会に及ぼしてしまうし、
それを権力側が弾圧することになると、
愛すべき灰色の部分も強制的に白に変えられてしまう。