焼き豆腐浮きも沈みもしない奴

◎川柳「焼き豆腐 浮きも沈みも しない奴」





よう分からん存在です、焼き豆腐。

スーパーには、様々な種類の豆腐が並びます。
この十年くらいで、特に高級なものが増えました。
でも焼き豆腐は、私が知る限り、高級化してないような。
と言って、消える事もなく、どんなスーパーにも確実にある。



上方落語に、大好きな焼き豆腐ギャグがあります。


  桂米朝「厄払い」

  ○:炒った豆が豆腐になるかいな。
   あら生の豆やなかったらあかんやないかいな。
  ▲:焼き豆腐になりまへんやろかな。
  ○:阿呆は阿呆なりに考えるところがおもろいな。


  桂文枝船弁慶

  (長いので、端折って説明します)

  怖ろしい嫁はん(雀のお松)を持つ、慌て者の喜公。
  ある日、焼き豆腐を買って来いと言われます。
  ところが間違えてコンニャクを買って来てしまう。
  取替えに行ったところ、次はネギを持って帰ってきた。
  腹を立てた嫁はんは、喜公に大きなモグサで灸をすえる。
  「かか、熱いわい」と叫び声を上げると、
  今度は井戸端へ連れて行って、水をぶっ掛ける。
  「かか、冷たいわい」と叫ぶと、またお灸。
  お灸と井戸水を繰り返すうちに、
  言われたのが「焼き豆腐」だと思い出す。


文枝師匠の、この部分をラジオで聴いた時、
笑いすぎて涙が出てきたのを忘れられません。
まさに名演です。

これら秀逸ギャグがいつまでも通用するように、
焼き豆腐も姿を消さぬよう願ってます。