詩情

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この古びたローラー、捨てられているのでしょうか。
ざらしになっておりました。

昨年末、道端でこれを見たとき、
妙な詩情が込み上げて来ました。

重くて、土の地面を平らにするしか能がなくて、
動力がついていないから人間に引いてもらうしかなくて、
疲れるばかりだから嫌われていて、
もう役目を終えたかに見えるローラーくん。
と言って、捨てに行くのにも重過ぎる。
金属ドロボウにも見捨てられている。

句材に出来ないかと考え、
人の目線を気にしつつ、写真を撮っておきました。

でも、どうもあの時に湧き出た感情を、
句という短い形式に収めることが出来ません。
ブルースの様な詩情だったから。



なあローラーくん、退屈ならちょっと歌ってみないか?

たった一つの役目を果たすべく、
重すぎる体を与えられてしまった辛さを。

でも自分のお陰で、
転ばなかった子供が大勢いて、
イレギュラー・バウンドしなかった球もあったという誇りを。

人間の足を挟んでしまった事もあるんじゃない?
そんな心の傷も、白状しちゃえよ。
きっと今では、その人にとって笑い話になってるんだから。

すみれの花を踏み潰したって? そうかそうか。
ありんこも? しょうがないな。

君が活躍した時代、
日本は社会を平らにしようと躍起になっていた。
それはかなり成功したように思うんだけど、
不景気とかいろいろあって、また格差社会なんだって。

どう思う?
どうでもいいって? 無気力だなあ。

でもさ、ソノハシは思うんだ。
君は、凸凹の凸の部分を潰す事で、平らな面を作ってきたわけだ。
生まれ変わったらさ、凹の部分を上に持ち上げる事で、
平らな面を作る道具になってみなよ。

ええっ? 
そんなことをしたら、下に空洞が出来て、全体が落ちちゃうって?

わっはっは!
そうか、それに気付かなかったな。大笑いだ。