陳舜臣「聊斎志異考」

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陳舜臣聊斎志異考(りょうさいしいこう)」





中国清代の短編小説集「聊斎志異」のうち12編を、
陳舜臣さんが翻訳というか紹介してくれるものです。

聊斎志異」については、以下を参照。
http://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E8%81%8A%E6%96%8E%E5%BF%97%E7%95%B0&oldid=23744120

いろんな妖怪が出てくるわけですが、
怪談と呼ぶには怖い部分はほとんどなく、
おとぎ話と呼ぶには男女のなまめかしい関係ばかりなので、
何と分類してよいものやら困る内容です。

紹介文によると、

 男と女の、はかなく不思議な交情が織りなす中国的妖美の世界

とのこと。



ま、陳舜臣さんが書くものですから、私にとって外れはありません。
いや逆に、女性を描くのが苦手な作家だと私は思う彼としては、
珍しい程に色気を感じさせてくれる一冊なので、ずいぶん楽しみました。

正直なところ、普通のエロ本よりも、こっちの方が心躍る思いがした。

出てくる女は、狐狸であったり、幽霊であったり、
人の姿をした鸚鵡であったり、菊の花の精であったり、まあいろいろだ。
どれも異界の者であるという共通点だけ(第二話はちょっと異なるが)。

美しくて、謎を含んだ神秘的な女性ってのは、どうしてこう魅力的なんだろう?

そして、
男の側が、例えば肉欲ばかりを求めて接すると酷い結末になるのだが、
自分の矜持をしっかり持って、
純真に彼女の愛を求めるとか、窮地を救うなど恩情をかけるとかした場合には、
切なくなるほどの誠実さでもって応えてくれる。

美しくて、神秘的で、誠実で、かつ暖かい肉体を持った女性との交情。
男の妄想の極致なんでしょうね、これが。

そうして、それを壊してしまうのが、
肉欲に走り過ぎるだとか、世間体を気にし過ぎるだとか、不要な好奇心とか、
これも男の男らしい欠点が原因になってしまう。

しゃあないわな。