ココア


受験生の頃の事。

勉強より、ラジオで洋楽等を聴いている方が多かったのだが、
一応、夜遅くまで起きていた私は、
毎晩のようにココアを自分で入れて飲んでおりました。
夜食の習慣がなかったので、空腹しのぎに。
気分転換にもなるしね。


で、ある非常に冷え込んだ晩、
家族の誰だったか忘れてしまったが、
もしかしたら亡くなった祖母だったかもしれないが、
「私にも入れてくれないか」と言うので、二人分を作った。

すると、「こんな美味しいココアは初めて!」と言ってくれたのである。

私自身は味音痴なので、自分のが美味しいのかどうかは分からない。
美味しい物を入れようとすら思っていなかった。
ただ毎晩の事なので、万事手順も分量も最適だったのだと思う。
そして、生まれて初めて自分の作った飲食物が褒められたので、
大変に嬉しかったのを覚えている。


さて、普通の人は、褒められると更に上達するものだと思うが、
私は普通の人ではないという話なのである。

それまで目分量で牛乳を小鍋に入れ、適度に温め、
また目分量でココアの粉などを入れてかき回して作っていた。
すべてはカンである。

ところが、大層褒められた次の日には、
「前の晩と同じように作ろう。どうやってたんだっけ?」となってしまった。
何ともぎこちなく、ちぐはぐとなり、
珍しく味の薄いココアを大量に作ってしまい失敗。

無意識のうちにカンでやっていた事を、
意識してやろうとすると、何故だか困難が待ち受けているのである。

その次の晩以降も、温め過ぎて鍋に焦げを作ってしまうなど、
失敗を繰り返し、平均点をも取れぬ有様。
作る度に意識が強くなってしまい、気分転換にならなくなり、
そのうち、すっかりココア嫌いになってしまった。

20年以上経ったけど、今でも飲みたくない。
香りも苦手になった。
我ながらヘンだと思うけれど、どうしようもない。


その後、ミルクティーを専門に作るようになりました。
そこで、先に書いたヤカンの底の輪ゴムという失敗もした。
この記事は、先日の記事からの連想である。