何事も裏目裏目と出た夜には

◎短歌もどき「何事も 裏目裏目と 出た夜には
                 ♪うららーうららー と歌いつつ呑む」



何をやっても裏目裏目に出る時がある。
馬券買いを続けていると、それが顕著にでる時期がある。
日常の諸事にも、それが反映されてしまう。


ずいぶん前の話である。
昼食時分、ラーメン屋に入った。

椅子に座ると、足元に何かが落ちている。
拾い上げて見ると、近くの大学病院のクリアホルダーでした。

中の書類というか、大きなカードというか、
年配の男性の詳細な検査結果のらしきものが入っていた。
「院外持出禁止」と朱書されてある。
日付も当日。
素人目にも、とても重要そうな物に見えた。

どうせすぐ近くなのである。
ズルズルっと食べた後、それを大学病院まで持って行くことに。


さて、病院に入ると、
受付のお姉さんとナースが談笑されていました。

そこで、「これ拾いました」と手渡します。

「まあご親切に有難うございます。お礼に点滴でも」
そんな感じで対応してくれると思ってたのだが、全然違った。

談笑の雰囲気が吹っ飛び、
「こんな大事なものを落とすなんて!」と、お二人の顔色が変わった。

げっ、女の人のこの顔はマズイ。
あたしゃ何にも悪くないのだが、三十六計逃げるに如かず。
「じゃ、お預けします」と言って、さっさと出口に向かうと、
小柄ながら気の強そうなナースが追いかけてきた。

「どこで拾ったんですかっ!」
「へっ?」
「病院の中ですかっ! 外ですかっ!」
「・・・ええっと・・」
「教えてくれないと困るんですっ!」

もう目が三角になっておられる。
こりゃ落とし主が叱られそうなので口ごもっていると、
別のもっと怖そうなナースがやって来た。

あまり抵抗を続けていると、どこか別室に連れ込まれ、
自白剤の注射でもされるのではないかと怖ろしくなったので、
まあ間違いの無い所を話して帰りました。


何だかとても悪いことをしてしまった気分。

あの後、落とされた男の人はどうなったんだろう?
相当のお叱りを受けたんだろうか?
でも患者を直接叱るような病院ではないはずと信じたい。

けど何しろラーメン屋だもんな。
もし彼の病気が糖尿病や高血圧だったとしたら、
院外に持ち出した点以外にも叱られる材料がある訳だしな。

どうせだから、こっちも悪乗りで、
チャーシュー麺の大盛りにギョーザ二人前、ビールの大瓶が・・・」
などと出まかせ言っておけば面白かったかもとは思ったけど。。。
そんな事をしたら、競馬の女神にさらに嫌われてしまう。


今でも思い出す。
馬券運も最低の頃だった。
こんなツキのなさも乗り越えてこそ、競馬好きは成長できるのである。