中村征夫「海中奇面組」

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クソ暑い今年の夏、私に一番の涼をくれたのは、
この新書サイズのフォトエッセイでございました。

写真もちろん良し、文章良し、個人的にはサイズも良し、
の三拍子が揃って1100円とは安い。
それを図書館からタダで借りて来て楽しんだ。ケチだねえ。


それにしても海の中の世界、魚らの世界って、不思議です。

本書を見て読んで知識は増えたはずなのに、
読む前よりも謎が脳中に膨らんでしまう。

奇面組」とあるように顔に焦点を当てた本であるので、
ホント魚たちが表情豊かでかわいい。
何故、魚類の顔がこんなに人間の心を打つのだろう?

「目は口ほどにものをいい」と言うけれど、
魚でも同じの様です。

魚の顔を見て、怖いとか、笑ってるとか、意地悪そうとか、
そう考えるのは人間の勝手なのでしょうが、
撮影の際にその表情と一致する魚の行動に遭遇される事もあるらしい。
そんなメガネゴンベに関する撮影事情の話には笑ってしまいました。

とにかく、どの写真も素晴らしくて、飽きません。

加えて文章も、面白かったり、切なかったり、
魚を通じて自然破壊の状況を伝えてくれたり、名文です。
(自然の本には、いい文章の書き手が多いと思う。文学者よりよっぽど)

中でも、サザナミフグについての内容は、
「ほんまかいな」と信じ難い気がするほど、
小さくて美しい物語でした。心に残ります。


最後に、私、このサイズの写真集って好きです。
本ってのは手に取りやすくないと。
「もっと大きな写真だったらな」との不満をそれほど感じなかったのは、
この本の作り手さん達の力量がなせる技なのでしょうか。