女の悲鳴


十年近く前のことだったと思うが、
早朝、まさにつんざく様な女の悲鳴で目を覚ました。
まだ薄暗い、5時ころだったはずだ。
そして女の悲鳴とほぼ同時に、男の怒号も鳴り響いた。
何やら揉み合っているような物音もする。

「レイプだ!」

とっさにそう判断し、というかそうとしか思えなかったので、
跳ね起きて、何か武器を持って表に飛び出そうかとしたところ、
「それにしてはヘンだぞ」と気付いた。

女の悲鳴は長く続いている。
男の声も続いているのだが、どうも男は二人いるらしい。
怒っている一人と、冷静な声を出しているもう一人。
そのうちに、

「そんなに死にたいんかっ!!!」

と、物凄い男の声がした。
窓を少し開け外を見ると、近くにパトカーが停まっていて、
見ている内に警察無線を使う声も聞こえてきた。

当時私が住んでいたのはローカル鉄道の踏切に近かった。
どうやらそこから線路内に入り込んだ女を、
警官が二人がかりで引きずり出した、ということらしい。

「なんだバカらしい。安眠妨害しやがって、クソ女が」
と、「クソ女」扱いし、再び布団に戻った。

その踏切は駅に近く、電車もスピードは出ていない。
見通しも良い。
多分ここでは死ねない、というのが私の見解。
本気で死にたかったら、
一両か二両のガタゴト電車ではなく、別の鉄道を選ぶはずだ。
きっと自殺未遂パフォーマンスなのだろう。
警察も大変だよな、と非常に腹を立てたのを覚えている。


さて、何故、こんな事を思い出して書いたのか。

実は今朝、また私は、外からの女の悲鳴にも似た声で目を覚ました。
人生で二度目だと思う。

一瞬ビックリしたが、今回のは複数人による紛れもなく歓喜の声。
何処の家だか知らないが、窓は全開なのでとてもよく聞こえる。
最初のは延長で追い付いたゴールの瞬間だったのだろう。
それからも何度か大きな声がした。
勝利が決まったらしき時にはさらに大きな声がして、
大量の拍手も混ざっていて、
テレビを見ていない私にも結果が伝わってきました。

女子サッカーは特に興味なかったけど、
オリンピックでのソフトボールの決勝と似た雰囲気を感じています。
とにかく、おめでとう&お疲れさま。