「テレビかい!」



聞き書き」などの民俗学関連の読書が好きです。
お婆ちゃんに聞く昔の村の生活、みたいなやつ。

子供の頃に、
宮本常一が編集した我が地元周辺の本を
買ってもらったのがきっかけだと思います。


さて、10月某日のこと。

登山道の入り口付近に金網があって、
トキリマメなどのツル植物が絡み付いてます。

そこを観察していると、
善良そのものの雰囲気のお爺さんが話し掛けて来た。
70歳代に見えたけど、
最近の年よりは若く見えるし80歳代かも。
犬の散歩中でした。

「そのヤマノイモ、誰も掘らへんなあ」

黄色くなりかけた葉を指さし、
ヤマノイモを掘るのが如何に大変か、
ひとしきり語ってくれました。

私が適当に相槌を打っていると、
次に、その横にあるクズに目をやり、

「あのクズの根っこかて、食えるんやで。
せやけど、掘るんが大変やねん」

と、掘り方や、澱粉の取り方を教えてくれます。

おおっ!
これは、民俗学聞き書き本みたいではないか!
聞いている私は、宮本常一先生になった気分。

リュックからメモ帳とペンを出して、
ちゃんと聞くべきではないか、
いやケータイで録音すべきかもと思いつつ、
話がひと段落ついたところで、
いつ頃、それをやっておられたのか尋ねると・・・

「ワシがやってたんちゃう、テレビで見たんや」

と言って、立ち去ってしまわれました。

期待した自分がアホやった!
ルアーに騙され、遊ばれた魚の気分。


私自身が年寄りになり、
もしマジメな若い連中が昔話を聞いてくれる機会があれば、
滔々と持ってる知識をひけらかしてみたい。

それで「いつ頃、やってたの?」と聞かれたら、
「ネットで見たんや」と答えてみたい。

楽しみやなあ~
ただ今のままでは誰も何も聞きに来ないだろうし、
何かしらの仕掛けが必要になる。
時間をかけて、そこのところを考えなきゃ。