色川武大(阿佐田哲也)と共に(「草競馬流浪記」を読む17・益田)

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益田競馬と直接関係はないですが、
最初に公営競馬に対する思いや提言が書かれています。


  公営競馬は、
  地方公務員(多くは県庁や市役所の出向)によって運営されている。
  彼等のなかには、自分の職業を誇りとしないどころか、
  「ああ、やれやれ。とうとう競馬なんかに廻されちまった。
  これでは出世は覚束ない」なんて考えている。
  こういう人たちは態度が権高くなる。

  実際、競馬なんかやる奴は人間の屑だ、
  虫ケラ同然だと考えるという種類の人間がいるのである。
  これは、むしろ中央に多いのであるが、公営にも存在する。

  競馬会の人間は何を考えているか。
  これは一部の人間だと思いたいが、
  彼等の目は、上役、中央官庁、もしくは馬主のほうを向いている。
  あるいは広く世論である。
  世論を代表するところのお母様方である。
  決して競馬ファンの方を見てくれない。

  彼等が何をするかというと、
  これは、もう、きまっているのであって、
  場内もしくは馬場のなかに公園を造る。
  これは例のチビッ子広場と同じ発想である。
  (後略)


おいこら、JRAの職員よ、この本を一度読め!
私も、これに習って吠えたい事があるが、まあ抑えておきましょう。


で、益田競馬場、一日の平均入場者が900人チョイ。


  実際、
  これからすぐに第一レースが発走するのが不思議に思われるほど、
  あたりは閑散としていた。
  職員も警備員も笑っている。

  競馬をやっているというより阿弥陀籤をやっているような感じだ。


騎手の方のやりくりも、実に不思議です。


  (前略)
  十五人の騎手のうち他に二人の騎乗停止処分があって、
  十二人になっちゃった。
  実にインチメイトで、家庭麻雀をやっているみたいだ。


という文章がある一方で、


  (前略)
  小野川騎手は、昨日から、これしか乗鞍がない。


という一文もあるんです。
少頭数のレースばかりとは言え、十人ちょっとの騎手で廻しているのに、
二日で一回しか乗れないジョッキーもいるとは!


この回には、阿佐田哲也こと色川武大が登場し、最後に勝つ。
ファンの方は、必読。