環境問題をアンチ・ブッシュの道具にするな!

温暖化問題に関して、気になることを書きます。

問題を科学的に把握し真摯に対応を考えている人の声より、
アンチ・ブッシュ(反米)で政治利用する人の声の方が、
目立っている傾向が気になります。

大統領を叩きたいがために、
対テロ戦争と並べ温暖化問題を声高に叫び、危機をあおる人がいる。
でも問題に関する知識は、新聞の見出し程度でしかなかったりする。

私もブッシュは大キライだ。
だからと言って、彼の政策すべてを批判するのは愚の骨頂でしょう。

京都議定書は、温暖化問題に対する、
非力ながら、現時点での最善のアプローチだと思います。
しかし、これを唯一の道と信じきる訳にはいかない。
別の方法を模索したいとの米政権の方針だって、
分からなくは無いと思っている(成果は聞かないが)。



ええっと、
ここでブッシュ政権の温暖化対策を検証すると長いし、
論旨から外れてしまうので、省略。



今回、書きたいのは、地球環境問題が孕む問題です。

ブッシュ政権は来年まで。
次は、民主党大統領の可能性が高いらしい。
民主党の方が環境問題に理解があるから、
政権交代で問題は前進するはずと、安心してませんか?

地球環境問題の歴史を振り返ると、
1992年が一つの転換点だったと言えそうです。

リオで地球サミットが開かれ、各国首脳や環境NGOが集まり、
「持続的うんぬん」が広く使われるようになった。
米国ではクリントン政権が誕生し、
環境のスペシャリストとして知られたゴアが副大統領に。
この頃から、どの国の政府も、少なくとも表面上は、
環境に配慮した政策をとるようになりました。

私も、この年を境に、事態はかなり好転したと思うし、
高く評価するべきだと考えてます。

ところが、環境保護論者の大勝利と思われたこの転換は、
皮肉にも環境NGOを苦境に追いやってしまう。
環境に優しい政権になったのだから、
彼らへの寄付をやめてもいいだろうとの風潮が広まり、
環境NGOが弱体化してしまったのです。

人権にも取り組んでいた某NGOが、
血も涙もないリストラ敢行という笑えない話もあった。

これは痛かったです。
どんな政権であっても、監視の目は絶対に必要。
環境NGOは玉石混交ではあったけど、
いろんな集団が、データを集め、議論し、
政府を批判する力が失われてしまいました。
クリントン&ゴアが環境に理想的な政治をしたとは言い難いのに。

そして、ブッシュが京都議定書離脱を決めた時も、
米国内の反対はムーヴメントになり得ませんでした。



環境問題は長期戦です。

憎たらしい政権だから声高に糾弾し、
表面上は穏やかな政権になったから矛を収め忘れてしまう、
そんな態度では一歩も前に進みはしない。

今、温暖化問題を取り上げてブッシュを攻撃している論者で、
環境を思うがあまりと言うより、
単に政治的主張を叫びたいだけの存在は迷惑でしかない。
米国内のそんな輩は、民主党政権になったら、温暖化問題など忘れ、
ジャパン・バッシングにでも走るのだろう。

以前にも、過激な活動をすれば寄付が集まるとの理由だけで、
存在していた環境NGOがあった。
そういう連中は、時世が変わったら、さっさと退出していった。
逆境でも、環境を守る活動を続けるなんて根性はなかった。

いなくなるべき奴がいなくなってくれるのは有難いが、
無闇に騒いでいた連中がいなくなる事で、
世間が問題を忘れ、関心が弱まってしまうのは恐い。かなり恐い。

地球環境問題に必要なのは、長期的な目と冷静な心だ。

政治の荒波の中で、それを社会全体が守り続けるのには、
どうしたらよいのだろう?