お金が帰ってくる話(「塩原多助一代記」より)

先日、司馬遼太郎著「草原の記」から、
馬が帰ってくる話を紹介し、
お金にも帰巣本能はないか、と最後に書きました。

関連して、「塩原多助一代記」を紹介させてもらいます。

私は最初、三遊亭円朝全集で読んだのですが、
改めて図書館で借りようとしたところ無かったので、
「名作歌舞伎全集」からのご紹介になります。


  ほとんどの人は、
  金が入ると仕舞い込んで、出さないようにするでしょ。

  でも私は、金の顔を見ると言い聞かせるんです。

  あのな、今から楽しようと思っているのか?
  させないぞ。

  私を見なさい。
  雪が降っても、風が吹いても、
  草鞋を履いて商いに出て稼いでいるんだ。

  お前のように、箱に入って楽をするとは何事だ!
  もっと稼いで来い!!    

  そうやって、お金の尻を叩いて仕入れに出すと、
  尻を叩かれて、働かねばならないと思って、
  その金が働いていくらか増えて帰ってくるんです。

  それをまた言い聞かせて出してやる。
  幾度も、幾度も、叩き出してやる。

  すると、自分ひとりでは帰りにくいと見えて、
  友達や、またその友達、親類やら何やらを連れて来て、
  もうこれだけ稼いで、身体がフラフラになったから、
  どうか傍へ置いて下さい、と言う様になる。
  よしそれなら、と置いてやる。

  これが自然に貯まる秘訣だと思うんです。
  

(言葉遣い等、園橋がかなり手を加えてあります)



こらお金! 園橋の財布で休んでいるとは何事だ!!
私を見なさい。
毎週、毎週、必死になって競馬に取り組んでいるんだ。
もっと稼いで来い! 

そう言って、財布から叩き出し、馬券に変えるのですが、
出て行ったまま帰ってこないってのは、どう言う訳なんだ?