コナン・ドイル「シャーロック・ホームズの帰還」

イメージ 1

'

ホームズ物の特長の一つは、濃厚な異国情緒でしょう。

作者ドイルの好みだったのか、
当時の英国小説には普通だったのか分からないけど、
新潮社版のこの短編集にもさまざまな異国が登場します。

アメリカ人による暗号のやりとり、
美しい自転車乗りとの強制結婚を試みる南アフリカ帰りの男、
ドイツ人教師の殺人、
ヨットでノルウェーへ向かった男が殺され有価証券が強奪され、
イタリア系による黒真珠盗難事件、
ロシア人虚無主義者の仲間割れ、
オーストラリアから来た夫人の亭主が殺される事件、
戦争に繋がってしまうという国際書簡の紛失事件、などなど。

「犯人は二人」というエピソードだけが例外でしょうか。
でもここでも、何故だか温室が出てきて、
エキゾチックな植物のむせぶような芳香がした、などと書かれています。

何よりも、ホームズが復活する「空家の冒険」では、
失踪中の彼本人が数年間を異国で過ごしたことになってます。


  だから僕は二年間チベットへ行ってきた。
  そのあいだラサへも行って、面白かったし、
  ラマの長と数日を過ごしたこともある。(中略)

  それから僕はペルシャを通過して、
  メッカをちょっとのぞき、
  エジプトのハルツームで回教王をも訪問したものだが(後略)


創作とは言え、よくもこれだけ無邪気な旅をさせたもんだ。
なおホームズは日本の柔術の心得があるから、助かったことになってます。
どうせなら日本にもやって来ていてほしかったな。

そして、これら全世界に広がる異国情緒の扇の要となるのが、
イカー街の彼らのくつろいだ部屋ということになります。

シャーロック・ホームズのシリーズはいろいろ語られていますけど、
私にとって一番の魅力はこの部屋なんです。
実はベイカー街221番Bという部屋こそが、主人公だとすら思ってしまう。
こんな魅力的な空間が登場する小説って、古今東西、存在するんでしょうか?



さて、話は洋楽へ変わります。
イカー街と言えば、当然この曲でしょう。


ジェリー・ラファティーの1978年の大ヒット曲。
邦題は「霧のベイカー街」だったっけ?
サックスで有名な曲だけど、パーカッションに異国の香りがします。

面白いのは(と、笑って良いのかどうか・・・)、
このジェリー・ラファティーには昨年、失踪騒ぎがありました。
入院していた病室から忽然と消えてしまった云々。
Wikipediaによると、今は居場所が確認されて一件落着とか。

イカー街繋がりで、ホームズのような探偵が出てきたらなと想像したのは、
私だけではないはずですよね。