九州の地理に詳しくなる辛さ

◎川柳「九州の 地理に詳しく なる辛さ」



10年近く前のこと。

とある町で、駅まで見知らぬ御婦人とタクシーに同乗しました。
バス停で時刻表を見て「随分、待たないと駄目なんですね」と、
たまたま会話をしたのがきっかけです。

50歳代と思える、とても穏やかな表情をされた方でしたが、
車内で「どちらから来られたのですか?」と尋ねると、
恥ずかしげに「弘前から」と仰られました

何を恥ずかしがる事があろうか、津軽弘前の町に。
名城があり、日本一の桜の名所であり、
歴史と文化において日本を代表する地方都市の一つである。
私は行ったこと無いですけど。

ところが、ちょうどその頃、
弘前は死者五人の悲惨な武富士ガソリン放火事件の直後で、
日本中がその話題で持ちきりだったのです。

「嫌な事で有名になっちゃって・・・」

消え入りそうな彼女の声が、記憶に残っております。


昨年の口蹄疫騒ぎ以来、南九州の地理に詳しくなりました。
追い打ちをかけるような今回の鳥インフルエンザや噴火によって、
またまたあの辺りの地図を眺め直しております。

馴染みのなかった「鹿児島県出水市」も、憶えました。
きっと、とてもよい町だろうと思うのです。

でもこの町の方々が、県外に出掛けて行って、
「鹿児島の出水市から来ました」と自己紹介すると、
「ああ、鳥インフルエンザの町ですね」と言われちゃうんだろうなあ。
仕方ないとは言え、いい気分ではないですよね。

阿久根市から来ました」と言うと「市長が・・」となっちゃう。
これもいい気分ではあるまい。

まあ、暗いニュースの元が早く解決され、
明るい話題が出てくるよう祈るのみです。
不運続きですが、精神強固なる九州の人間が、
この程度でくじけるはずはないですから。