「帰化植物を楽しむ」

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近田文弘・清水建美・濱﨑恭美編の2006年の本です。

この手の本を眺める程度に読むのはよくやる事です。
今回は、震災や原発について考えるばかりではシンドイので、
息抜きの目的もあって、図書館で借りてきました。

で、いろんな文章の寄せ集めなのですが、
中に熊谷賢氏による「タンポポが教えてくれたこと」という
10ページちょいの短い章がありました。
これが岩手県陸前高田市での活動報告だったのです。
震災を忘れるために読み始めたのに・・・

自分のお子さんや、多くの小学生たちを巻き込んで、
セイヨウタンポポエゾタンポポの分布調査をされるなど、
とっても微笑ましい内容になっています。

また、植物という小さな命を見つめる視線も優しい。
「おわりに」に、こんな部分がありました。

  はじめはエイリアンと思った帰化植物であるが、
  知れば知るほど私たちに多くを教えてくれるのである。

いい文章だなって思います、ほんと。

植物に関してのみならず、
やってきた他者を安易に敵とみなして排除しがちな私たちですが、
その状況をしっかり観察し、経緯を知ることで、
私たち自身の問題点に気付かされる場合はあるはずですよね。


陸前高田市の壊滅的被害をTV等で見ているだけに、
このすごく温かい文章が、切なく感じられて仕方ありません。
だってきっと、TVで見るよりもヒドイ状況なのでしょうし。

この章の著者や、登場される9年前の調査に関係された方々が、
今、どのような状況におありなのか、全く分かりません。
「全員の無事を祈ってます」で終わらせたい気は山々ですが、
それは甘過ぎるような気もしています。

ただ、津波は多くのかけがえのないものを壊してしまったけど、
壊せなかった物だってあるんだとも思います。
この文章を読んで得られる温かさは、どうしたって壊せやしない。

調査に参加された当時の小学生たちも、
大学生になったり、社会人になったりして、
かつてタンポポを探し歩いた記憶を持ち続けておられると思う。
その胸の中は、壊せやしない。

そして、


  「はじめは敵と思った津波であるが、
  知れば知るほど私たちに多くを教えてくれるのである」


と受け止められるようになってから、
新しい地震津波対策が生まれるのだろう、とも思いました。
強い違和感を覚えられる方が多いでしょうけど。