脱兎

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20年以上前の事だが、未舗装の林道を車で走った。
私は助手席で、運転は山のベテランさん。

「ウサギだよ」

と言われて前を見ると、ノウサギが必死になって走っていた。
「脱兎のごとく」との表現があるように、
なかなかのスピードだったけど、やはり自動車の方が速い。
運転されている方が、ひかないようウサギと同じ速さに減速したら、
まさに「追いかけっこ」になってしまいました。

道の脇の茂みに入ればそれで終わりなのである。
なのにウサギは必死になって、道のほぼ真ん中を車の進行方向に逃げる。
だから追いかけっこは終わらない。
カーブになって、そのまま直進したウサギはやっと視界から消えました。

運転の方が教えてくれた。
キツネなら車に気付いたら、すぐに道の脇に飛退く、賢い、と。

キツネに比べると、ウサギはアホと言う事になってしまうのだが、
一方でネコのように咄嗟に身体がすくんで立ち止まってしまう動物もいる。
それでひき殺されてしまう。
ロードキルで見つかる生き物の多くは、すくんでしまうタイプだろう。

このタイプが一番のアホとなる訳だが、
実のところ、私自身も瞬時の判断が求められる場面で動けなくなる方だ。
ウサギよりアホなのであります。とほほ


さて、ちょっと前のこと。
山道を歩いているとノウサギがいて、
私に気付くと、ピョンと横の茂みに飛び込んだ。
そうしてヤブツバキ(だと思う)の木の下で、
じっとこちらに耳を立てている様子でありました。

キツネみたいな逃げ方をしやがるなあと思いましたが、
そのお陰で至近距離で見ることが出来ましたし、
こうやってコンデジで写真を撮る事も出来ました。
ノウサギは何度か見ていますが、こんなのは初めてでした。


しかし、アレですな。

私はウサギを見ると、口が疼いて仕方ありません。
ウサギはほとんど鳴かないらしいけど、
何か喋りかけてくれないかなって夢見てしまいます。

だって、ホンモノの野生ウサギに対して言ってみたいじゃないですか。

「何とおっしゃるウサギさん」って。



◎「下らない 夢は積もれど 邪魔でなし」