長谷川晶一「最弱球団 高橋ユニオンズ青春記」


1954年(昭和29)から56年までの三年間、
パリーグが8球団だったころにあった
「高橋(トンボ)ユニオンズ」の記録。

今でも名が知られているのは、
現役最後をここで飾り300勝を達成したスタルヒン
後にプロ野球ニュースのキャスターを務めた佐々木信也くらい。

初年度は6位で最下位はまぬがれたものの、
残り2年は最下位で勝率も低く、「最弱球団」と言われるのも仕方ない。

しかし、
著者が当時の所属選手などへのインタビューを重ねて得た答えは、

「最弱」ではあったけれども、決して「最低」ではなかった。


でした。
この一文だけで、本書を最後まで読み通した価値がありました!
特に、最初のOB会の雰囲気がとても好印象だったので、
そこから丹念に当時の状況を追った上での結論がこれってのは、
読み手としても嬉しかったです。


本書からよく分かるのは、
組織においてトップの人柄がとても大切、ということ。

オーナーだった高橋龍太郎が、
実業家や政治家として、どんな人物だったのか知りませんが、
弱小球団のプロ野球のオーナーとしては理想だったのでは。

要は、「暖かく、見守る」。

実際にはずいぶん腹の立つことが多かったはずですが、
少なくとも本書では、
それを現場の選手などにぶつけた形跡は見られません。

もちろん、暖かく見守るだけで強いチームは生まれないのだけど。


プロ野球の歴史に興味のある方は、是非、ご一読を!
長嶋茂雄が入って来る直前のプロ野球の雰囲気もよく伝わって来ます。