上田篤「縄文人に学ぶ」






◎これまで「竪穴住居」が納得いかずに不思議だったのだが、

人間のためのすまいというより
「火のためのすまい」とかんがえると納得がいく。


という本書のツカミの部分に魅かれ、
手に取って読了させてもらいました。

そんな「ナルホド!」が数多い書であります。

私たちが旬の味覚を楽しむのも、
南向きの部屋を好むのも、
鍋料理が恋しくなるのも、
主婦が家計を預かるのも、
玄関で靴を脱ぐのも、
家々に神棚や仏壇を祀るのも、
みなルーツは縄文にあった!


Amazonにあったデータベースの一部をそのまま引用。
どれも「ナルホド!」なのでした。


◎かつて、日本人論の本をよく読んだ時期があった。
1970年代に出版されたものを中心に。
インテリさん達の対談集が多かった。
「よくまあ、こんなペラペラと自論を展開できるもんだ」
と呆れつつ、楽しみつ、ちょっぴり参考にもしつつ。

本書に書かれている通り、
日本人論ブームってのはバブルの頃に消え去り、久しい。

が、本書は「すべてを縄文時代帰納させた」日本人論である。
読み終えて、
「ナルホド」の一つ一つが楽しかったのと同時に、
「久々に日本人論を読んだ」との実感にも浸っております。


◎正直、私は本書の中身を評価する事は出来ない。

例えば重要なポイントである神話の解釈などについて、
どれだけ妥当なのかどうか全く分からないから。

「日本人論」という非常に大きなテーマを語るには、
細かい実証性をいちいち問う訳には行かない。
本書のテーマである縄文時代などは、
学問的に分かっている事は少なすぎるし。

断片をつなぎ合わせ、つなぎ合わせ、
ちょっと無理があるような気が読み手としてはするが、
一つの大きなストーリーを紡ぎ出す。

それが正しいのかどうか分からないけれど、
「面白い」のは確かでした、私にとって。


◎昨年の一時期、古墳についての本をたくさん読んだ。
ムダの極致に思える巨大古墳を作った人達も、
結局は現代の自分と同じ人間であり日本人である、
と気付いた事が最大の収穫でした。

本書の収穫も、
これまで先入観で深く大きな断絶があるものと思っていたが、
縄文人と自分の間には共有出来る部分が大きいらしい、
と思えるようになったこと。
「同じ日本人やんか!」って。

特に低山歩きが好きな人間として、
今後、山の見え方が変わって来るようにも思います。

星4つ。☆☆☆☆