「フィールドの生物学」完読への道




もう全部読む事に決めたのである。
現時点で18冊が出版されています。
近隣の図書館で貸出予約をしたら、
一気に集まってきたので、集中的に読みました。





本シリーズの第一作。

単に動物の生態について書かれているだけでなく、
森林減少による影響の現状など社会的な側面への言及も多い。

扱われている動物は、マメジカやゾウだが、
一種に特化している訳ではなく、
主としてサバ州の全体像が分かるようになっている。

個人的には、第3章の「塩場」の観察記録が面白かった。

非常に多くの研究蓄積がなされてきている一方で、
意外に分かってない事も多い熱帯アジアの動物たちの様子。
特にこれからフィールド研究をする若い人にとって、
入門書として是非手にして欲しい一冊でした。
これがシリーズ第一作というのは、
偶然ではなかったのかも。




本シリーズは、派手に面白いのが数冊あるから、
比較してしまうと地味に思えてしまうが、
読み進めていくうちに、
タイの森の様子や、周囲の地域社会との関係など、
いろんな事が見えてくる好著でありました。
海外調査地では、ボルネオ島の作品が多いので、
タイというだけでの新鮮さもあります。

また、テーマはタイトル通りなのだが、
イチョウ以外による種子散布のデータもあって、
フェノロジーも含め森林全体での考察が基盤としてある。
本を書かれた時点で分かっている全体像が伝わって来て、
熱帯林の一筋縄ではいかない奥深さがよく分かります。


以下は、ちょっと私的な脱線。

「森での意外な注意事項」というコラムで、
「じつは一番怖いのは倒木だ」と書いてあるのに、
そうだよなあって思いましたです。
「風もないのに突然、巨大な枝が落ちてくる場合がある」、と。

私もクアラルンプールの都市公園を歩いていて、
死の恐怖を覚えた事がありました。
直径20cmくらい、
太い部分の長さ約2mに細い枝多数の太い枝が、
ほんの目の前に突然落下してきたことがあったから。
見上げると、30mくらいの高さから落ちて来たらしい。
直撃してたら、かなりの確率で死んでいた。
助かっても、頸椎を相当やられていただろう。

でも、これって気をつけようがないんだよ。。。





生態学系が多い本シリーズで、
これは染色体の分析を中心とした分類学でありました。
私の興味とは、ちょっと違いました。

でも、フィールドでの著者の活き活きとした様子や、
世界各地を飛び回っての研究だから、
それぞれの地域の自然環境の違いとモグラの在り様など、
分かりやすい文章で面白く読めました。

モグラについて無知な私は、
熱帯に行けばどんな珍しいのがいるのかと期待していたら、

「落葉の分解が急速に進むため、
腐葉層が発達しない。
そういった環境では地中の餌資源がないために、
モグラの生息には適した環境にならない」

のだそうだ。
著者は最初に「日本はモグラ天国」と書いている。
そんな事も知らずに、私はこの国に住んでたんだ!