「フィールドの生物学」完読への道②
それぞれ中身が充実しているので、
この三冊をひとまとめにしちゃうのは申し訳ないが、
だらだらと続いている記事でもあるので。
テングザルは、川沿いか海沿いの木の上で眠る。
そのため、これまでの研究は、
ボートを利用して観察出来る範囲でのもので、
日中の森の中での行動は謎のままだった。
しかし著者は、水辺の森の中でも、
なんとか動き回れる調査地を見つけ、
テングザルの生活を明らかにすることに成功します。
テングザルが反芻に類似した行動をするという発見など、
とても貴重で興味深い観察結果が得られ、
労多い調査が実り多き成果となっていて、
読んでいてなかなか気分が良かったし、興奮もしました。
前回の記事で、
オランウータンの本を一番にお勧めする、と書いた。
それに変わりはないが、
本書の方が短くて読み終えやすいので、
とっかかりとしては良いかも。
本は薄いが、中身はきちんとしているし。
以下の二冊は、フィールド系というより、
実験系であります。
飼育方法の確立が、どれほど大切かという点が、
非常によく分かります。
フィールドとは全く違った苦労話や、
新しい工夫で一気にスムーズに事が進んだりする点など、
なかなか読み応えがあります。
クマムシについては、
最近ブームが来ていたようで、
さまざまな出版物が出されています。
私は、唯一、本書を読んだのみなので、
全ての事実を新鮮な気分で受け取りました。
あるていど、クマムシの知識をお持ちの方が、
どう感じられるのかは不明。
苦労して飼育方法を確立されてからの大飛躍が、
本書の読みどころなのでしょう。
NASAに行っちゃうってのは、
権威に弱い私としては驚きでもありました。
生物として、実験材料として、
ユニーク極まりない存在であるクマムシと共に、
著者さんもなかなかの個性をお持ちです。
現時点で、クマムシがどれほど最強か、
という点については随分と分かって来ているようです。
でも、「何故?」の部分は道半ばらしい。
そこが明らかになれば、
生物や生命についての新しい世界が
見えて来そうな気がするし、
著者とクマムシの二人三脚を
長い目で応援したくなりました。
本シリーズは、自伝的側面を強く持つ本が多いが、
これは本格的にクモについて、寄生バチについて、
深く読ませてくれるものでした。
クモに対する寄生について、
そもそも知らない事だらけだったし、
更に著者が明らかにしていった新事実も多いし、
「勉強したぞ!」感の強い読後になっております。
読みどころはいろいろあるけど、
やはり寄生者による寄主の行動操作の奇怪さは、
面白いを通り越して不気味であり、
生物の不思議の極みの一つと感じました。
そうか、、、
風邪をひいた時に咳がでるのは、
人間がウイルスに操作されてるんですね・・・