「野生動物カメラマン」
何よりも、ハイエナ、ライオン、ホッキョクグマ、
ペンギン、パンダ、ニホンザルなどの、
とっても愛らしい写真は一見の価値以上のものがあります。
それらを眺めるだけで、幸せな気分になれました。
新書版でサイズが小さいのは不満ですが、
それは仕方のないこと。
それ以上に、私としては、
著者と野生動物たちへ近付き方に興味を覚えました。
(前略)
ライオンであれ何であれ、
野生動物に近付くのはそう簡単ではありません。
たいていは煙たがられるので、
ぼくの場合は、
「もう少し、近づいてもいい?」
「ここまでなら、まぁいいよ」
というふうに許しを乞いながら、
ジワジワと距離を縮めていきます。
それが数分、数時間でできることもあれば、
一日、一週間かかる場合もあります。
他の個所にも書いてありますが、
著者は動物がこちらを見極める過程を大切にしているようです。
なるほどなあ~、と私も大納得。
私は近所の低山をウロウロするだけの人間で、
いろいろと自然を見て観察しているつもりですが、
逆に、山の生き物たちが私を観察しているという視点は、
ごっそり抜けていたように思います。
ただ、本書を読んで、改めて振り返ると、
「そうか、自分は観察されていたんだ!」
と思えば、腑に落ちる事が多い。
昆虫や野鳥など、
それまで全く近付かせてくれなかったのが、
突然、目の前で自然な姿を見せてくれる事があります。
不思議だなって思ってましたが、
彼らがこちらを観察した結果、
「無害」の判定をしてくれたのかもしれません。
まあ、昆虫に関しては疑問ですが、
野鳥に関しては間違いではないでしょう。
行者山のカラスたちは、
どうも私のことを覚えているとしか思えんし、
岩倉山のシマヘビも、
見かけているのは毎度同じ個体のようで、
「また来やがった!」という感じの態度に見えちゃいます。
私は、同じ山、同じ山道ばかりを歩く人間だから、
岩合氏が意識してやってきた事を、
意識せぬまま結果的にやってたのかも知れませんね。
そうだとしたら、とっても嬉しく光栄なこと。
最近、秋も深まり、冬が近づいてます。
身近な生き物たちも世代交代の時期です。
私が自然を見に行くだけではなく、
私自身を生き物たちに見せて、
警戒心のあまり入らない普通の関係を築けるよう、
次は意識してやってみたいなと思いました。
とってもいい本です、これ。
長雨の憂鬱も、競馬の負けも、
吹っ飛ばしてくれました!