井田徹治「鳥学の100年:鳥に魅せられた人々」






日本の鳥の研究の歴史を、まとめた本です。

明治から百数十年という時が流れ、
多くの学問分野で100年以上の歴史が積み重なった。

もちろん、それぞれの分野に携わる研究者にとっては、
常識なのだろうけど、
一般の人間にはこうやって紹介してもらうと、
知らなかった事だらけでとても面白い。

全ての学問分野で、
このような一般書を出して欲しいものです。

もしかしたら、他分野では、
先人の悪口だらけになってしまうのかもしれないけど。


日本の初期の鳥研究の特徴は、
皇族や華族、公家などの出身者が多かったこと。

「山階」とかの名前から、
うっすらそうではないかと私も思ってましたが、
本書で彼らの業績だけでなく、
情熱や苦悩などの人となりも知ることが出来、
感心すると共に頭の下がる思いもしました。

そんな上流の人々中心の世界から、
一般の研究者による研究へ移行していく流れ。

研究方法が、どんどん進化して行く流れ。

その間にも、野鳥を取り巻く環境が変化し、
幾種もの鳥が絶滅したり、絶滅の危機に追い込まれたり、
また研究者や地元の愛好家により保護が進んだりしたことなど、
いろんなエピソードが盛り込まれています。

私など、唯ぼんやりと野鳥を眺めるばかりで、
名前すらほとんど分からぬ現状ですが、
本書のお陰で散歩の際などに
幾多の研究者やボランティアの方と同じ目線を
共有する事が出来たかなと思いました。

とても有意義な一冊。
感謝です。