マドボタルについて③

この長い記事も、三回目でようやく終わることが出来ます。

最初に書いたように、読んでもらうことを目的に書いた訳ではないですが、
ここまで丁寧に読んでいただいた稀なお方は、
どのような感想をもたれたでしょうか。

イライラしたという方、
肝心かなめの事が何も書いてないじゃないかと言われる方、
そう思われたアナタはきっと科学のセンスがあります。
少年・少女の純粋な心がちゃんと残ってます。

そうそう、このマドボタルの記事は今回が初めてではなく、
今年に入ってから、光りの写真も載せるなど、何度も記事にしてきました。
でも、一度も、この疑問に触れないで済ませてきましたね。



◎なぜ光るのか?


そうなんですよ、何で光るんでしょう、幼虫くんが。

ゲンジボタルが光ることについては、
異性を引きつけるためだと習ってきました。

でもマドボタルの場合、
幼虫の光が一番強くて、サナギ、成虫と成長するにつれて、
光が弱くなっていくのです。

成虫の光はかなり弱いようなので、
人工の光があふれる今の世の中で、
異性を引きつけるのに役立っているとは思えません。

ましてや、異性を引きつける必要のない幼虫やサナギが光る。
なんでや?

私のような素人が、いろいろ考えても、結論は出ないので、
今回も、


  大場信義編・写真
  「ホタル点滅の不思議-地球の奇跡(特別展示解説書7)」
  2004年、横須賀市自然・人文博物館発行


のお世話になりましょう。

ここでは、
「発光が捕食者に対する警告シグナルとなっている可能性がある」
と書かれています。

一般に、ホタルは異臭を放つそうです。
だから、一応、アリ類やクモ類が外敵なのですが、
あんまり好まれていないことが分かっているとか。

で、この異臭と発光を学習能力のある捕食者に関連学習させることで、
捕食圧を下げることが期待できる、のだそうだ。

難しい表現なので、具体的に言い直しましょう。

お腹をすかせた蜘蛛が、餌を捜し求めています。
そこに、ピカピカ光る一見、美味しそうな幼虫がいました。
食べようと思って近づいてみると、
何だか、嫌あな匂いがして、とても食欲が湧かないので、
食べるのを諦めてしまいます。

そんなことが繰り返されるうちに、
もう光を見るだけで近づかなくなってしまう、という訳。

これは、一つの説で、まだ確実に証明されたものではないようです。
あくまで、「そう考えられる」とのこと。


う~む。
専門家が頭を絞って「そう考えられる」と言うのだから、
そう考えるしかないんですかねえ。

シロウトの素朴な疑問として、
匂いだけで十分なのでは、と思ってしまうんだけどなあ。
実際、匂いだけで自分を守っている生き物がたくさんいるんだし。


こうなると、経済学的な視点が必要でしょうね。

マドボタルの幼虫にとって、
光を発するという行為が、どれだけのコストになっているんでしょ。

ここに発光しない想像上の幼虫くんと、発光する普通の幼虫くんがいたして、
必要となるエサの量は、発光する場合の方が多いはずです。
それが、どれくらい多いのか。

一方、異臭を発する物質を作り出すためのコストも考える必要があります。

これも想像上の無臭の幼虫くんと、普通の臭い幼虫くんがいたとして、
必要となるエサの量は、臭い幼虫くんの方が多いはずでしょう。
それが、どれくらい多いのか。

発光に必要なコストよりも、異臭を出すために必要なコストの方が大きければ、
先の専門家の説が成立する可能性は高いはずです。

つまり、マドボタルの幼虫は、本質的には、異臭によって身を守っています。
でも異臭づくりは大変で、その分、余計にエサを食べる必要があります。
光を出すのは、異臭づくりよりは簡単なことなので、
光を使って外敵に学習させることで、大変である異臭づくりを軽減できれば、
幼虫にとって都合がいい。

これはあくまでも園橋の想像です。
さあ、実際は、どうなんでしょうねえ。



結局、明確な結論のないまま、このクソ長い記事を終えることになりました。
最後まで読まれた方がいないことを願っております。





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追記:2006年11月8日、
日が暮れてからまた歩いてみましたが、
この秋初めて、マドボタル幼虫の光を確認できませんでした。
7日から、かなり冷え込んだせいでしょうか。

この数年の経験から、冬篭りに入ったものと思われます。
また、来年の4月終盤あたりまで、お休みされることでしょう。

本年の最終確認は、10月30日でした。