堺散歩


最近よく書いている「兵庫散歩」について、
とりとめのない文章で、とは最初に断り書きをしたが、
実はもう一つよく脱線すると書いておくのを忘れていた。

今回は、兵庫散歩・脱線編でございます。


数年前に「歴女」なる言葉がよく聞かれた。
現状はどうなんでしょう? 一過性のブームだったのかな?

ま、流れが今でも続いているとして、
例えば東京のOL歴女さんがいたとする。
連休を利用して、京都に行ったとする。
周囲はどう反応するのだろう?
「フツーだな」って感じではなかろうか。
奈良に行ったとすると、ちょっと反応は変わるかな。

しかし、「堺に行った」と言うと、
「へぇ、やるな」と思われるのではなかろうか?
歴史に一家言ある足クサ上司も感心するかも(無価値だろうが)。

私は思うのである。
堺はもっと注目されるべきだ。
もっと観光されるべきだ。
(ほんとは上空から見たいけど)大古墳がある、
中世都市の雰囲気が残ってる、
長い茶道文化がある、
刃物やら線香やら生きた伝統工芸がある、
歌人与謝野晶子の生地でもある、
意外にも新鮮な海産物が豊富だ(大阪の漁業は馬鹿に出来ない)。

大阪にはお土産が無い、と言われる。
京都の新幹線の駅では八つ橋が売れ、
新神戸駅では何ちゃらの洋菓子が売れるのだが、
新大阪駅で一番よく売れるお土産は赤福餅なのだ。伊勢名物やんか!
そう、意外に大阪のお土産ってないのです。
岩おこしは地味だし、面白い恋人は販売中止だし。

しかし思うに、堺の和菓子屋がその気になれば、状況は変わるはず。
堺の凄まじさは14世紀創業の老舗が普通に存在することだ。
何せ茶道文化の源流ですからね。
大量生産には問題があるだろうから、赤福化は難しいだろうけど。
もし大阪に行かれて半日の時間の余裕がおありなら、
堺に足を伸ばし千利休が愛した菓子をお土産に買うと面白い。


さて、脱線から兵庫散歩に戻ろう。

大阪湾の西に兵庫があり、南に堺があり、
ともに中世には重要な貿易港として栄えた。
堺にはその名残があるが、兵庫にはほとんど残っていない。
それが不思議だ、というのが兵庫散歩の文脈なのである。

歴史を確かめると、堺は大坂の夏の陣で焼け野原になっている。
さらに18世紀には、大和川の付け替えをしたせいで、
旧堺港は土砂がたまってしまい、機能が低下している。

つまり、江戸時代になると、千石船が発着した兵庫に対し、
堺はライバルですらなくなっているのです。

それなのに、兵庫(神戸)には創業うん百年の老舗店がない。
古い街並みもほぼないと言ってよい。
独自の文化もない。
そう、堺と比較したときに、兵庫の現状の特徴が見えてくる。

改めて、町の歴史って不思議だ。