森浩一氏の著作二冊







昨年来、古墳時代縄文時代の本を読んでいる。

これまでは「古墳の○○」みたいな内容のばかりだったが、
今回、森浩一という著名な考古学者の
自伝から学ばせてもらいました。

物理の相対性理論はサッパリ分からないけれど、
アインシュタインの伝記は面白いという人は多い。

考古学についても同様でした。
物理ほどサッパリ分からぬという事ではないけれど、
そこに人生を賭けた人物の歩みには、
こちらの心を揺さぶる物があります。

特に森浩一は、その業績もさることながら、
戦中・戦後の激動の時代に、まだ未成年の身ながら
数多くの発掘に没頭された方である。
著作には当時の雰囲気が強く匂っている。

別の話になってしまうが、
先日亡くなられた桂米朝は、
戦後、衰退の一途をたどっていた上方落語を、
情熱と執念で復活させた一人である。

森氏や米朝師だけでなく、
様々な分野で様々な方々が労を惜しまず献身されたことで、
現代の日本文化に繋がっているのだと思うと、
改めて頭が下がる次第であります。

本書ではそんな時代の様子と、
今とは大きく変わってしまった大阪南部の農村風景と、
情熱に燃える少年の周囲の反応などが伝わってきます。

個人的には、当時のお百姓さんが、
遺跡や遺物と近しい距離で日常を送っていたのを知り、
古代と分断されてしまった現代との違いを再認識できたのが、
大きな収穫だったかな。


二冊目の「魂の・・」の方は、
自伝というより、その時代時代のエッセイ集。
一年ごとにその年の考古学の成果をまとめられた文章は、
当時の熱気が伝わって来て読む価値ありでした。

研究者同士の軋轢や、マスコミとの関係など、
ドロドロした話が散見される。
結局、研究者も人間なんですねえ。
特に考古学はマスコミの注目も大きい分野だから、
だからこその顕著に出てしまう問題点があるようだ。
勉強になるなあ~

ファンからすると、
司馬遼太郎松本清張氏との交流も面白かったですよ。


「青春」が星4つ。☆☆☆☆
「魂の」が星3つ。☆☆☆ ってことで。