栗
昨年の今頃、街道歩きを何カ所かでやった際、
いくつも出会う古墳について、
あまりにも知らなすぎる自分に気付き、
何冊か古墳関連本を読みました。
その流れで、
同じく知識のほとんど無かった縄文時代本も。
そして、縄文時代の一つの鍵になるのが「栗」と知りました。
縄文人の食を支えた木の実の一つであり、
大きなクリ材の柱跡が見つかっているように、
建築材としても重要だった事が分かっています。
私自身、不勉強で栗について、
あまり深く考えたことはありませんでした。
もっと栗について知っておいた方が楽しかろう。
と、手に取ったのが本書であります。
読み物としての本書は、星2つくらい。
しかし、今回の私みたいに、
栗について大まかな知識を一通り得たいと思う身には、
星4つの好書です。
知識の「起点」としてはベストかと。
期待していたほどは、
縄文時代を含めて、歴史の話題は多くなかった。
でも、少ないことが不満に繋がるのではなく、
記述の少なさが語る栗研究の現状がよく分かります。
今後、遺跡発掘や、分析が進めば、
もっともっと分かって来る事があるはず。
そこを楽しみにしたいです。
読み応えがあったのは、明治以降の話題。
昭和期のクリタマバチ被害と現在までの対策や、
鉄道の枕木として相当伐採されてしまった事、
などについて書かれた部分でした。
栗は、食用としても、木材利用としても、
長く日本人にはとても身近な存在でした。
しかし、現在はどうか?
和菓子などに加工されたのを口にする機会はあっても、
かつてほど日本人は栗を食べなくなっている。
木材としての利用も、あまり聞いたことがない。
食文化と建築文化の急激な変化と、
クリタマバチによる深刻な被害がほぼ同時期に重なって、
いつの間にか縁遠い存在になってしまったようだ。
日本産の栗の復権に賭ける取り組みも、
本書後半では触れています。
渋皮の取れやすい品種改良など。
日本の多様な食文化が維持されるためにも、
そんな努力が実を結んで欲しいけど、どうなりますやら?
落語「質屋蔵」で
丁稚さんが丹波グリを買わせる場面が、
私は大好きなのです。
ああいう風景が日本のどこかの一角で復活したら、嬉しい。
木材としての利用の復活については、
何とも言えませんけど。
不思議なもので、栗の本を読むと、
山歩きでも栗の木に自然と目が行きます。
すると、簡単にクリタマバチによる虫こぶが見つかりました。
六甲山系の山の栗に、
今でも被害があるんですねえ。
改めて、外来害虫の脅威を思い知った次第です。