山野井徹「日本の土:地質学が明かす黒土と縄文文化」







小学低学年の頃、私は関東から関西に引っ越してきた。

子供ながら多々気付いた両地域の違いの中で、
文化面を除くと、
一番印象に残っているのが土の色の違いでした。

関東時代の私は、土は黒いものだと思ってた。
なのに、関西に来てみると、色が薄くて明るい。
中学だったか、高校だったかで、
黒いのは火山灰だからとの説明を知り、
一応、納得していたのですが・・・



「草地と日本人」を読んでから、
もっとも読みたかった本書をようやく読了。

土に関して、地質に関して、
これまでほとんど関心を持って来なかったので、
正直、読むのはタイヘンでした。
読み物というより、大学レベルの講義集のようでしたし。

しかし、我慢して、丁寧に内容を追って行くと、
非常に面白く意義深い事実と見解に辿り着きます。

日本列島を覆う表土の約2割を占める
真っ黒な土、クロボク土。
火山灰土と考えられてきたこの土は、
縄文人が1万年をかけて作りだした文化遺産だった。

と、本書の裏表紙に簡略なまとめ(の一部)がある。
この結論に到達するための一冊なのだが、
私のような素人には、この一文だけで十分だったかも。
それくらい破壊力のある結論だ。

幼かった頃に見ていた土の黒さ。
これが縄文人の行為によるものとの説に、
私の脳中にロマンが満ち溢れてきております。

刺激豊かで、素敵な読書になりました。
星5つ。☆☆☆☆☆


ただ、素人の私が気になるのは、
この様な地質学の研究成果に対し、
考古学側はどのような反応・対応をされているのか、
という点であります。

賛成し、新たな縄文時代像を造り直すのに取り入れるのか、
はたまた否定的見解を実証を持って示し議論するのか。
まさか、無視・黙殺ってことはないよな?