ブナ林の恵み







ブナ林地帯の狩猟や採集に関する
民俗学的フィールドワークがまとめられた、
貴重かつ有意義な一冊でした。

聞き取りで得られるクマ猟、カモシカ猟、野草採取など、
実地でのさまざまな知恵の面白さは、
どれも生き生きキラキラしていて民俗学の醍醐味です。

ただ、それだけでなく、
例えばクズとワラビの澱粉生産の比較についてなど、
定量的な把握もされていて勉強になった。

調査対象は、長く米・稲作には頼らなかった村であり、
縄文時代の様子を考える上では、
絶対に知っておくべき事柄が溢れる研究記録になっている。

星をつけるなら、勿論五つ。☆☆☆☆☆



以下は、個人的な考察。

縄文時代、日本の中心は東北であったようだ。
ブナ林の恵みがそれを支えていたのは、本書の通り。
また、九州南部なども遺跡が多く見つかっている。

兵庫県阪神地域に住む人間としては、羨ましいゾ。

では、六甲山は当時どんな様子だったのか?
どのように利用されていたのか?

山歩きをしながら、そんな事ばかり考えています。

「ブナ林の恵み」を読みつつ、
ブナが(ほぼ)無い、ミズナラも(ほぼ)無い、
熊がいない、カモシカもいない・・・と引き算をしていきます。
そこに、シイ・カシの実はある・・・と足し算もするのですが、
なかなか北の地の豊潤さには追い付かない。

南北に長い日本列島、考える程に面白い。