小川真「森とカビ・キノコ」







まず最初に、苦情を書いておく。

タイトルが悪い。
本書の中身を反映できていない。

副題は「樹木の枯死と土壌の変化」。
こっちをメインにすべきだったろう。

トンカツを、
「パン粉料理です」と出されたような気分だった。


苦情は、ここまで。

内容は、考えさせられる部分が非常に多く、
一般の人間で森林や果樹の枯死について興味を持つなら、
間違いなく必読書である。

遅ればせながら今夏になって
ナラ枯れが身近であることを知った私には、
目新しく、これまで気付かなかった視点ばかり。
とても勉強になった。

文句なしに、星5つ。☆☆☆☆☆


乱暴にまとめてしまうと、
大気汚染や汚染物質を含んだ降雨・降雪によって
菌根菌がダメージを受け、
弱った樹木が病害虫に襲われて枯死しているのではないか、
という推察が本書の主旨。

ブナ科やマツのように菌根菌を持つ植物の
被害が目立つという点。

ナラ枯れについて、日本よりも先に、
海外での事例があって、
その流れで理解する必要があるという点。

愕然とさせられる視点でありました。


著者の指摘する内容は、実証されていない。
そもそも、因果関係を科学的に明らかにするのは
かなり困難な事象である。

著者は特に大陸からの越境汚染を疑っておられるが、
様々な事実の符合が見られる、という段階だ。

空間的にも、時間的にも、
とてもスケールの大きな事柄であるだけに、
まず問題提起することに意義があるのが現状だろうか。
国際的な政治問題の範疇に入ってしまう面もあり、
そうなったら安易な主張も出来ないしね。

私としては、自然が好きな一人として、
常に本書の主旨を念頭に、
自分の好きな山道を歩き続けようと思うのが、
現時点では精一杯であります。


長くなるし、まだ個人的な思いが多々あるので、
続きを書くかもしれません。
取り敢えず、この記事は、中途半端に終わります。