中村浩志「ライチョウ」




最近、自然系読書での好調が続いています。
なかなか良い本ばかり。
馬券成績が最悪な分、
ここでバランスが取れているようだ。
嬉しくもあり、悲しくもあり。

で、この本も良かった。






三年前に出されたものです。

全く存在を知らなかったワタシが書くのも何だが、
鳥類好き、自然好きの範囲を超えて、
もっと広く、そして長く読まれるべき一冊。

特に観光などで、ライチョウを姿を自分の目で見た人は、
是非とも内容を知っておくべきだろう。

基本的には研究書ながら、読みやすい。
文章は平易だし、構成も見事。
難しい方法論は、飛ばしても構わないですし。


生態に関して、まず捕獲し、標識を付け、
個体確認をしてからの丹念な調査が初めてなされています。

その結果が、第2部に提示されている訳ですが、
これによって日本のライチョウの全てが分かる
と言っても過言でないくらいの内容です。

そして、ライチョウの個体数が減っている事が明らかになり・・・

第3部「ライチョウは生き残れるか?」は、
未来へ向けての問題提起の章となっています。

ライチョウの現状、
気象変化や野生生物の侵入など高山の環境の実態、
トキやコウノトリなど日本のこれまでの野鳥保護の問題点・・・

知っておかねばならぬ事が丁寧に解説され、
改めて日本のライチョウという存在の「奇跡性」が語られます。

単に一種類の鳥類を護るに留まらぬ意義が、
自然面だけでなく、文化面でもあるのだと、
熱く、強い説得力で伝えられてきます。


ネットで検索すると、
著者である中村先生が登場した
TVドキュメンタリーもあったらしい。
ワタシは未見なのでよく分からないけど、
それと合わせて、
是非皆さまに手に取って頂きたい本でした。