「フィールドの生物学」完読への道③



このシリーズを18冊全部読もうと思いたって、
現時点では残りあとわずか。

我が宝塚市の図書館にはかなりの数が揃っていて、
非常にありがたいのですが、全てではない。
近隣図書館から取り寄せて、
やっとこの二冊を借りられました。

ただ、どちらも、Amazonのレビューでは、
あまり評価が高くない。

恐る恐る読み始めたのですが、
本が薄くて物足りない気はするけれど、
いろんな意味で興味深かったです。

私が評価するとしたら、どちらも星4つかな。


本シリーズを数多く読んで思うのは、
基本的に若い研究者には書くべき内容が多くない、
ということ。

自身の研究成果を全て開陳しても、
本一冊の中身にはならないくらいの年齢だから。

そこに、自分の研究テーマの背景や研究史を入れ、
フィールド等での体験談を面白おかしくいれたりして、
なんとか一冊の体裁を整える様にされている。

それでも分量の薄さが気になるのが、
この二冊です。
買ったものなら不満はあるだろうけど、
借りた私が文句を言っちゃあアカンよな。
それでも言ってしまうけどね。





熱帯林の昆虫の季節性がメインテーマ。
一斉開花と虫の関係など、面白かったです。

本シリーズの他の本と比べると、
自伝的要素、研究者としての成長物語が、
あまり強く出ていない。
薄い本だから、もっと書き込めば良かったのに。

また、大プロジェクトの一員としての
フィールド調査だから、
苦労譚の要素もあまりない。

正直、この本については、
もっと書いて欲しかったという気がします。
こちらは勉強する気満々で読み始めたのだし、
上質ながら少量すぎるオードブルを出された気分。





ちょっと不思議な本でありました。

宿主の性別を変えてしまうという内容は、
読み手を興奮させる程の衝撃がありました。
凄い研究です。

でも彼女本人はと言うと・・・
自身も書いているとおり、全体的に暗い雰囲気なのだ。

研究が大好きで没頭していると言うよりは、
自分の研究や研究界などを醒めた目で見ている感じ。
熱意に欠けている訳ではなく、
粘り強く勉強されているのは分かるけど、
このシリーズの他の著者がもつ破壊力あるエネルギーは、
あまり本書からは感じられない。

しかし、研究の神様というのがいるのなら、
彼女はその神様に好かれているように思われる。

なかなか見せない生物の奥秘を、
彼女にはちらっと見せているような気がする。
それを彼女も実に的確に捉えておられる。

こんな研究者もいなきゃならない。
読み終えて、強くそう思いました。

生物の不思議な世界を明らかにしていくうえで、
いろんなタイプの研究者が必要なはずだ。
生物に限らないが、
研究者ってのが似た様な人種にばかりになったら、
それはそれで弊害が大きいと思うので。