読書

水谷高英「野鳥フィールドスケッチ」

水谷高英「野鳥フィールドスケッチ」 五年前に出版された本を読んで、 今さらなのだが、 良い絵だなあとため息が出て来ます。 毎月一枚のフィールドスケッチが、特によい。 野鳥たちの表情が愛らしいのは当然として、 空の穏やかな雰囲気、 森や木々の優しい…

バート・ヘルドブラー他「ハキリアリ」

バート・ヘルドブラー、エドワード・O・ウィルソン 「ハキリアリ:農業を営む奇跡の生物」 本書は2012年に翻訳出版されたものだし、 検索をすると、 ハキリアリについてはTVドキュメント等があったようだ。 だから、「ハキリアリが面白い」ってのは、…

千松信也「けもの道の歩き方」

千松信也「けもの道の歩き方:猟師が見つめる日本の自然」 非常にためになる本でした! ただ、私は知らなかったのだが、 この著者は以前に文庫本化までされた本を書いていて、 本書はその延長線上で読まれているらしい。 前作と合わせて、どんな魅力があるの…

「水滴と氷晶がつくりだす空の虹色ハンドブック」

「水滴と氷晶がつくりだす空の虹色ハンドブック」 著者:池田圭一、服部貴昭 監修:岩槻秀明 先日は、環水平アークを見たと、 不鮮明ながらこのブログに写真を載せました。 かつて、環天頂アークについても書いてます。 そんな虹やアークなど、 空の魅力を分…

盛口満「雑草が面白い」

盛口満「雑草が面白い」 私にとって、盛口先生の本はどれも面白く、 こんな方が日本にいて下さって天に感謝しております。 本書も、とっても為になりました。 中でも、阪本寧男先生の論文から書かれている部分は 盛口氏も書かれている通り目からウロコであり…

佐藤寛之「琉球列島のススメ」

佐藤寛之「琉球列島のススメ」 アマゾンでレビューが一つも入らないから、 どんな本なのかと心配しつつ手にしました。 ・・・良い本でしたよ! このシリーズの他の本は研究者によって書かれていますが、 本書は学位は持っておられるけれど、 フリーの「生き…

「フィールドの生物学」完読への道③

このシリーズを18冊全部読もうと思いたって、 現時点では残りあとわずか。 我が宝塚市の図書館にはかなりの数が揃っていて、 非常にありがたいのですが、全てではない。 近隣図書館から取り寄せて、 やっとこの二冊を借りられました。 ただ、どちらも、Ama…

「フィールドの生物学」完読への道②

それぞれ中身が充実しているので、 この三冊をひとまとめにしちゃうのは申し訳ないが、 だらだらと続いている記事でもあるので。 松田一希「テングザル:河と生きるサル」 テングザルは、川沿いか海沿いの木の上で眠る。 そのため、これまでの研究は、 ボー…

金森朝子「野生のオランウータンを追いかけて」

金森朝子「野生のオランウータンを追いかけて: マレーシアに生きる世界最大の樹上生活者」 本シリーズも、ずいぶんと読ませていただきました。 海外のフィールド調査をしたいと考えている若者に、 どれか一冊だけ推薦するとしたら、 私はこの本を選びます。…

「フィールドの生物学」完読への道

もう全部読む事に決めたのである。 現時点で18冊が出版されています。 近隣の図書館で貸出予約をしたら、 一気に集まってきたので、集中的に読みました。 松林尚志「熱帯アジア動物記:フィールド野生動物学入門」 本シリーズの第一作。 単に動物の生態に…

まだまだ読書運の好調が続く

斉藤政美、椎葉クニ子「おばあさんの「植物図鑑」」 1995年4月に出版された本。 ちょうど神戸の震災忌の日前後に私は読んだが、 その震災やオウム事件の頃のものでした。 宮崎県椎葉村で、 伝統的な焼き畑をされている方が、 日々の暮らしの中で、 植物…

年末からの自然系読書

今年に入ってあまりついてない気はするけど、 昨年来の読書運は絶好調です。 悪いことは忘れて、 良いことに意識を集中させましょうぞ。 一冊ずつ、丁寧に紹介するべきですが、 返却期限があるので一括して簡略に。 米倉久邦「日本の森列伝:自然と人が織り…

コケの自然誌

ロビン・ウォール・キマラー著 三木直子訳「コケの自然誌」 2012年に出版されているから、 昨年末に手にした私は3年ほど、 この素晴らしい本を読まずに過ごしていた訳だ。 何と勿体ないことか! 年を越して読ませてもらいました。 読書締めと、読書初め…

再び木と歴史の読書二冊

「中世への旅」という記事の続き読書です。 ここでも備忘録がわりに。 瀬田勝哉「木の語る中世」 前回の二冊の物足らぬ点を補えるかと読みました。 ただ、似ているけど、ちょっと目的の異なる本でした。 中世の森林や、人間と植物の関係を明らかにするという…

中世への旅

二週間前の連休中から、 日本の中世の森林や植物関連の本を二冊読んだ。 図書館の返却期限を過ぎてしまったので、 慌てて備忘録代わりの記事にしておく。 二冊とも読んでみて、 中世の森林の様子はおぼろげながら分かる程度でした。 境界や利用方法を巡って…

初見健一「70年代小学生歳時記:ぼくらの年中行事 春・夏・秋・冬」

初見健一「70年代小学生歳時記:ぼくらの年中行事 春・夏・秋・冬」 1970年代の東京の小学生、 著者本人の生活が描かれています。 私より、数年お兄さんにはなりますが、 ほぼ同年代と言って良いので、 「懐かしいな」と読ませてもらいました。 まあ私…

フェリックス・フランシス「強襲」

フェリックス・フランシス「強襲」 ここ数年、小説はほとんど手にしてませんが、 本シリーズは見つけたら、読まざるを得ません。 パリのテロの直後だったので、 架空の殺人事件であっても、 心のある部分が反応してしまい、 読み始めは辛かった。 でも、読み…

小川真「森とカビ・キノコ」

小川真「森とカビ・キノコ」 まず最初に、苦情を書いておく。 タイトルが悪い。 本書の中身を反映できていない。 副題は「樹木の枯死と土壌の変化」。 こっちをメインにすべきだったろう。 トンカツを、 「パン粉料理です」と出されたような気分だった。 苦…

身近な生き物に関する読書二冊

丸山宗利など「アリの巣の生きもの図鑑」 前回紹介した「裏山の奇人」の小松貴氏らが作成した、 好蟻性生物の図鑑。 図鑑ではあるが、標本の写真ばかりではない。 「どうやって撮ったんだ?」と不思議で仕方ない、 一瞬を切り取った写真のオンパレードである…

裏山の奇人

小松貴「裏山の奇人: 野にたゆたう博物学 (フィールドの生物学) 」 昨年の夏に出版された本。 私はこれを名著と呼ぶ。 ただの昆虫本ではなく、 「自分のことを分かって欲しい」的な要素がたっぷりあり、 そこの面白さも加味されての素晴らしさ。 正直、タイ…

地球全史

先月の後半は、地球の歴史に関する読書が中心。 清川昌一、白尾元理「地球全史:写真が語る46億年の奇跡」 この本の写真は素晴らしかった! 地球の歴史について、 子供用に書かれたのをかつて読んだ記憶がある程度だが、 当時とは随分内容が変わっていた。…

「銀の匙 Silver Spoon 第13巻」とばんえい競馬のこと

「銀の匙 Silver Spoon 第13巻」 不定期連載になり、12巻から間隔が開いたが、 ようやく13巻が出されました。 どうも次の14巻で完結しそうな雰囲気だし、 前12巻と共に、クライマックスへの助走といった感じ。 将来を決めかねて悩む主人公の八軒が…

森林や植物に関して、やっと通史が見えてきたか(読書雑記)

藤尾慎一郎「<新>弥生時代:500年早かった水田稲作」 昨年来、古墳時代の本や縄文時代の本を何冊か読んだ。 その中間の弥生時代は飛ばして来たのだが、 中学時代以来、この時代について学ばせてもらった。 当時、教科書で学んだ弥生時代の姿を、 幾つも…

10年先を見越した生活

飽きもせず、 工藤雄一郎・国立歴史民俗博物館編 「ここまでわかった! 縄文人の植物利用」 からの記事であります。 とりあえず、これで最後にします。 日本には自生しなかったろうウルシの木が、 一万二千六百年前から日本には存在していた。 大陸から、人…

縄文人の植物利用

工藤雄一郎・国立歴史民俗博物館編 「ここまでわかった! 縄文人の植物利用」 先週、イチイガシとシイについて記事にした。 本書に少ししか書いていないイチイガシと、 ほとんど全く書いていないシイについて記事にして、 本書の紹介にするのでは片手落ちで…

ブナ林の恵み

赤羽正春「採集:ブナ林の恵み(ものと人間の文化史103)」 ブナ林地帯の狩猟や採集に関する 民俗学的フィールドワークがまとめられた、 貴重かつ有意義な一冊でした。 聞き取りで得られるクマ猟、カモシカ猟、野草採取など、 実地でのさまざまな知恵の面…

山野井徹「日本の土:地質学が明かす黒土と縄文文化」

山野井徹「日本の土:地質学が明かす黒土と縄文文化」 小学低学年の頃、私は関東から関西に引っ越してきた。 子供ながら多々気付いた両地域の違いの中で、 文化面を除くと、 一番印象に残っているのが土の色の違いでした。 関東時代の私は、土は黒いものだと…

柿渋、タブノキ、そして・・・植物利用関連読書三冊

前回、「栗」の本について記事にしました。 図書館でほぼ同じ位置にあったので、 植物利用関連の本をあと三冊読みました。 今井敬潤「柿渋(ものと人間の文化史116)」 「栗」と同じ著者によるもの。 魚網、木製容器、衣類、和紙、建築塗装などの用途で、…

今井敬潤「栗(ものと人間の文化史166)」 昨年の今頃、街道歩きを何カ所かでやった際、 いくつも出会う古墳について、 あまりにも知らなすぎる自分に気付き、 何冊か古墳関連本を読みました。 その流れで、 同じく知識のほとんど無かった縄文時代本も。 …

歴史関連の軽い読書4冊

関根秀樹「縄文人になる:縄文式生活技術教本」 タイトルや表紙から、おふざけの本かと思ってたら、 非常にまともで得る事の多い読書になりました。 火起こし、土器作り、石器作り、木の実のクッキー作りなど、 著者らが試しに一度やってみたというレベルで…